(この記事は、前の記事の続きです。あわせてお読みください。)
東西冷戦終結後、具体的な敵を失ったアメリカのネオコン政治家たちは、イラクのフセイン大統領などの、独裁国家を新たな敵として、軍備の増強と、アメリカ軍の世界展開を行ってきた。
第一次湾岸戦争は、その良い口実となり、さらに2001年の9.11同時多発テロは、特に具体的ビジョンを持たない、ジョージ・ブッシュ大統領にとって、恰好の軍備増強、戦争外交の口実を与えた。
その後のアメリカ=ブッシュ政権のアフガニスタン、イラクへの侵略と、イランへの恫喝などについては、皆さんのご存じのとおりである。
テロは確かに許されるものではない。しかし、国内にテロ組織がいるというだけで、その国全体を軍事的に攻め滅ぼす必要と権利がどこにあるのか?(アフガニスタンのケース。)また、大量破壊兵器保有疑惑というだけで、やはり一国家を攻め滅ぼし、指導者を国内法を適用とはいえ、事実上アメリカ主導の裁判で処刑する権利がアメリカにあるというのか?(イラクのケース。)
どうやら、ブッシュ政権は、アメリカにだけはその権利があると思っているらしい。大量破壊兵器疑惑が偽りであったことが分かってからは、今度は、自由と民主主義の輸出を旗頭に、侵略を正当化しようとしている。そのロジックなら、世界の多くの国に、アメリカが正当性を認めなければ軍事的侵攻がありうることを意味する。
そして、アメリカは、「テロとの戦い」のために、軍事費を冷戦当時よりも増額し、米軍の世界的再編という行為に出た。
この中で、日本周辺に関して言えば、韓国からの段階的撤退と指揮権譲渡(北朝鮮はもはや脅威ではないという認識に立つ)、一方で、在日米軍の強化ということで、日本にアメリカの陸軍部隊の司令部を置き、また、自衛隊をアメリカ軍の配下におさめる行為を着々と進めている。沖縄では、海兵隊基地のグァム移転に伴い、なぜか日本が2兆円(5兆円ともいわれる)もの負担をし、さらに辺野古に新基地の建設、対中国をにらんだ高江へのヘリパッド建設とオスプレイ配備が行われようとしている。
そして、岩国に、今まで厚木基地にいた、空母艦載機87機の移転を行おうとしている。
この動きは、決して、日米安保条約に基づく、日本の防衛のための行為では無い。アメリカの世界的軍事戦略の中で、中国を仮想敵国としてにらみつつ、沖縄をおもな拠点に、横須賀と佐世保に配備された空母機動部隊により、東アジアから南アジアまでを範囲におさめる、アメリカの戦争体制の構築が目的なのである。
つまり、日本は、自衛隊のアメリカの属軍化(設立当初からその傾向はあったが、今や、完全なものとなりつつある)と、地理的に、アジアへの出撃拠点と、対中国でのアメリカの軍事的防波堤としての役割を、押し付けられようとしているのである。
以上のように考えないと、今回のアメリカ軍再編の動きは理解できない。なぜ、日本に陸軍部隊の司令部がおかれなければならないのか?高江に配備されるオスプレイは、海兵隊などを敵地に運ぶことを主目的とした特殊な航空機であり、日本の防衛には全く必要のない兵器である。
この動きの中で、日本の方から、「日米同盟」の強化を言い出すのは、事実上、国を売る行為に等しい。日本の自衛隊が、日本の防衛とは無関係な戦争に駆り出されることを前提としての「日米同盟の強化」なのである。
もとより、「日米同盟」とやらには、法的根拠は何一つない。あるのは、日本国憲法に優越しない、条約である「日米安全保障条約」だけである。そこには、両国の防衛のためのみの軍事力行使の内容が書かれている。決して日本の自衛隊は、アメリカの先兵として、アメリカのテロとの戦いという名の、世界を相手にした戦争外交の一部を担うことを意味していない。
日本国憲法の平和主義からも、自国の自衛以外への軍事力行使は認められないにもかかわらず、既成事実が積み重ねられ、自衛隊は、シリアゴラン高原、インド洋西部からアラビア海、クウェートからイラクへ、と派遣されている。これに武器行使が盛り込まれれば、もはや自衛隊は、「自衛」隊ではなくなる。
このことは、「村野瀬玲奈の秘書課広報室」の今日(2月3日)の記事(http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-590.html#)に詳しい。
日本の国益には何一つかなわない(そして、沖縄や岩国の地域住民の犠牲の上に)、アメリカの戦争への日本の積極的協力が、憲法の平和主義も無視し、法の根拠もなしに着々と進められているのである。
その根拠として推進側が唱えているのが、ひとつは、安保条約の無理な拡大解釈により、アメリカが世界のどの国、またはテロ組織からも攻撃されるかもしれないから、安保条約の双務性を強調し、「集団的自衛権」の名のもとに、世界中でアメリカの戦争に、自衛隊を派遣するというロジックである。これは無理な法解釈であり、違憲であるばかりか、条約の解釈としても常識では読み取れない。
もう一つは、「世界第二位の経済大国としての責任」っという言葉で表わされる。しかし、経済大国は軍事大国化しなければならないという理由はない。軍事力の保有も配備も運用も、各国の独自の判断によるべきだ。なのに、「日米同盟」強化の主張者は、アメリカとの同一行動のみが、経済大国としての責任の取り方であるという、非論理的な理屈を展開している。
アメリカは、アフガニスタン侵略、イラク戦争で、従来のNATOの協力を仰いだが、前の記事で述べたように、NATO諸国の国民の離反によって、孤立化を深めているのが実情である。
この状況下で、アメリカにとって、対米盲従姿勢しかとらない日本の自民党政府の態度は、自衛隊を新たな属軍として、アメリカ軍の先兵として、ときには盾として利用するという、アメリカにとってのみ有益な体制を作ろうとしているのである。それがすなわち、「日米同盟の強化」なのである。
では、なぜ、自民党は、なし崩し的憲法無視のこの動きを進めるのか?そこには、守屋前防衛事務次官の汚職から、ほんの少しだけ見えてきた、軍事利権の存在がある。コイズミ、安倍、福田首相が属する、町村派(旧森派)は、それ以前の経世会支配の土建利権政治とは違い、金融・重工業族という、都市型利権政治屋の集まりである。防衛(軍事)利権もまた、その一部である。
彼らには、日本の国防などどうでも良いのである。実際、彼らの認識では、日本を攻めるような国は存在しないと思っているのだろう。しかし、国防の必要性がなくなれば、軍事利権は減少する。それを防ぐためには、アメリカの「テロとの戦い」に基づく、世界戦略の一端を積極的に担うことにより、軍事費の増額=利権の拡大、っという図式が描かれるのである。
日本を、世界で孤立する、戦争外交の国アメリカの属国にしてはならない。日本人が、アメリカの都合で、海外で人を殺し殺されてはならない。一部の族議員の私利私欲のために、自衛隊員が血を流し、財政逼迫の中、国民生活を犠牲にして軍事費を増額することがあってはならない。
違法性の高い、「日米同盟の強化」を推し進める必要は、日本には一片も無い。もはや経済的にも日本は大国とは言えない今、上記の第二の根拠も崩壊している。
今、沖縄で、そして岩国で起きていることは、日本にとっては必要のないことを、アメリカの都合と、軍事利権を漁る族議員の都合で、その地域住民を犠牲にしようとしているのである。そして、日本人が戦争に巻き込まれる危険性を増大させているのである。
翼賛マスコミによる、欺瞞に騙されてはならない。北朝鮮や中国の脅威を煽りたてる勢力に騙されてはならない。よしんば中国に覇権的野望があったとしても、日本にアメリカ軍がいなければ、日本が攻撃されることはない。また、今の中国がかつてのイデオロギー闘争のような理由で軍事的冒険主義に出るとは考えられない。
繰り返すが、「日米同盟の強化」は、アメリカのネオコン政治家と、日本の軍事利権族議員たちのみの個人的利益のために行われている、違法行為なのである。断固反対の意思を貫き、平和主義に基づき、軍縮、非戦の道を歩まねばならないことを、ここに明言しておく。
(この記事と前の記事を民主党に送付しました。)

極東条項も、専守防衛の自衛隊も、かつての「日米安保」のものであり「日米同盟」は別物のようです。
大手マスコミや政府らが、なんの躊躇もなく同盟などという言葉を使い出しているのは、恐ろしいことです。
「日米同盟」のためには、国権の発動としての戦争を禁じた「日本国憲法」はどうしても外さなければならない重石です。軽く扱われているからといって、憲法が権力を縛る重石であることに変わりはありません。
米軍再編は、正しくは「日米軍事再編」であり、自衛隊の変態にも注目しなければなりません。
沖縄への新基地建設は、海兵隊がグアムに移転するのに造られようとしているのは、明らかに平時の自衛隊の使用を想定しています。米軍は有事の際に自由使用できる基地を確保しつつ、自衛隊にはメンテナンスなどのロジスティック機能を担わせようとしています。米軍は自衛隊と共に前線で戦うなどという危険は冒しません。
「日米安保」は、米軍に国家の安全を守ってもらう代わりに基地を提供するという条約でした。集団的自衛権も行使できない憲法の頚木をもった日本国が、軍事的な同盟関係など結べるはずがないのです。
にも関わらず、「日米同盟」などという言葉が流通している現在のおかしさを声を大にして叫ばなければなりませんね。「王様は裸だ」と。
コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、「日米(軍事)同盟」なるものは、どこにも存在しないし、法的根拠もないのです。
そして、冷戦が終わり、緊張緩和に向かうべき軍事の世界で、自分たちの利権をあさるために、「テロとの戦い」を口実に、軍拡に走るアメリカに日本も追従しています。
なし崩し的に既成事実を積み上げる、日米両軍と、官僚と政治家。その状態を看過し、「日米同盟」という言葉を平然と垂れ流すマスコミ。
私たちは、声を挙げ続けなければなりません。岩国にも、この声が届くことを願って。
コメントありがとうございます。
「理髪店の椅子の折れる音」ですか。詩人ですね。確かに、ものすごく突然、重大な危機がやってくるわけで、そのような事態かもしれません。