2008年03月17日

「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の崩壊

 以下は、一昨日の中日新聞の社説である。私はこの前半部分に着目した。
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2008031602095788.html

(なお、マックス・ウェーバーの同著作については、ウィキペディアをご参考願いたい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%86%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%BA%E3%83%A0%E3%81%AE%E5%80%AB%E7%90%86%E3%81%A8%E8%B3%87%E6%9C%AC%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E3%81%AE%E7%B2%BE%E7%A5%9E

 少し歴史的議論になってしまうが、ドイツの社会学の泰斗、マックス・ウェーバーは、中世ヨーロッパを支配したカソリックへの、「抗議者(プロテスタント)」から始まった、宗教改革者の1人、スイスの神学者カルヴァンの思想に着目し、特に、カルヴァンの唱えた「予定説」は、天国の門をくぐれるものはすでに定められているが、人間はそれを知ることはできない。ただひたすら、自分の天職(コーリング)に勤め、その達成において、自分はその一人であるという宗教的確信を得ることができると述べ、禁欲的勤労に励むことを奨励した。

 ウィキペディアの記事中にもあるとおり、ウェーバーは、産業革命以降の資本主義的経済発展が、おもにカルヴァン派の流れのプロテスタント諸国で起きていることに着目し、このカルヴァンの思想が、資本主義的な活動と勤勉さ、そして禁欲性により浪費されずに再投資が行われ、さらに経済が発展するという仮説を立てたわけである。
 ウェーバーは社会学者であり、経済学者ではない。だから、社会に起きている現象を捉えて、仮説を立てたのである。だから現象を分析しているだけで、必ずしも真理とは言えない。

 実際、キリスト教国でなくても発展している国はある。しかし、現在の唯一の超大国、アメリカもまた、カルヴァンの思想を基にするプロテスタントが多い国に分類される。

 しかし、上記中日新聞の社説にもあるように、ウェーバーの仮説では、禁欲的であるはずのプロテスタントが、今や、自らの私利私欲を漁るだけのエゴイストと化し、新自由主義と言う体制の下で、一部の者への富の集約と、他者からの収奪を進めているのが、今のアメリカであるといえよう。
 同じく、中日新聞の社説中にある、「ノブレス・オブリッジ」とは、「高貴なるものの責任」とでも訳され、本来は、王族、貴族は率先して軍の先頭に立つべき。転じて、持てる者が、社会的活動や寄付などにより、自分の恵まれた立場の利益の配分を行う精神のことで、本来はイギリスの言葉である。
 これもまた、今のアメリカを中心とした、新自由主義国家では失われて久しい精神かと思われる。

 日本は、元来キリスト教国ではないが、そのためか、昔から腐敗政治はお家芸と言え、アメリカ以前から、政権は腐敗していた。その点では、ギリシャ人哲学者が言った、「権力は腐敗する」のたとえは、日本にもとても良く当てはまっているというべきであろうか。

 マックス・ウェーバーが今に生きていたら、100年前の、この著作はあり得なかっただろう。カルヴァン派の系譜を受け継ぐアメリカやイギリスで始まった新自由主義は、世界を席巻し、私利私欲のために侵略戦争を起こして、数十万の人々を死に追いやった、「敬虔な」プロテスタント信者ブッシュ大統領を見て、ウェーバーは、100年前の著作の撤回を図るに違いない。
 一方で、経済発展はまだでも、民主的選挙で反米、反新自由主義を勝ち取った、南米大陸のカソリック信者たちのことを何と言うであろうか?

 まさに、新自由主義国家では、「倫理」の崩壊が起きているのである。

 日本でいえば、経団連会長の御手洗のように、自分はキャノン創業者(複数)の中の一人の肉親であるというだけで、経営者になり、経団連会長になったものの、自社で「偽装請負」と言う違法行為が発覚すると、立場を利用して、その行為自体を合法化するように持っていこうと動くなど、まさに倫理のかけらもない人物と言わねばなるまい。

 数日前に述べた、「モラル・ハザード」は、個人レベルだけでなく、企業や政党なども、目先の私利私欲で動くようになっている、今の状況を端的に示しているのかもしれない。
 それらの根源にすべて新自由主義があるとまでは言わないが、ある程度の影響はあるはずである。たとえば、アメリカの企業では、4半期ごとの利益で経営者の評価が出るため、短期的利益のみを追求するという。また、日本では、もともと腐敗の温床であった政治の分野で、政治家に媚びるためなら、なんでもする、なんでも言うという人々が多くはないか?
 新銀行東京での石原都知事の無責任ぶりは、まさに恥じ知らずの倫理の欠如を物語る。

 やはり、新自由主義はやめよう。格差の拡大をもたらし、倫理感の無い一部の世襲権力の持ち主たちに、富が集中したりする制度はやめよう。(石原は、弟の世俗的人気による世襲と言える。)
 改めて、そう主張したい。

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posted by 眠り猫 at 15:44| 東京 ????| Comment(2) | TrackBack(3) | 思想
この記事へのコメント
プリマスの感謝祭の祝いに参加したことがあります。(七面鳥のロースト、七面鳥ハムサンド、クランベリーパイだったかが振舞われました。)感謝祭前、アメリカのテレビには関連する大量の番組が流されいました。翌日には何事も無かったようにそれで御仕舞い。
宗教的自由を求めたという背景はあったにしてもピルグリムもピューリタンもアメリカ先住民にとっては武装移民です。
Founding fathersを称えるのはアメリカの建国神話(日本における天孫降臨)であって、中日新聞社説のようなアメリカ理解は福沢諭吉の「文明論之概略」とさほど変わらぬのではないかと思います。
Posted by ゴンベイ at 2008年03月17日 17:33
>ゴンベイさん
 おっしゃる通りで。
 ですから、私も前半部のみに注目としました。どぅも。
Posted by 眠り猫 at 2008年03月17日 18:01
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