今国会での提出は見送られたが、民主党の一部も巻き込んで成立が図られようとしている、自衛隊(海外)派遣恒久法。
私は、今回の名古屋高裁のイラク空自派兵違憲判断以前から、この種の法律は違憲であると述べてきた。
http://heiwawomamorou.seesaa.net/article/91071614.html
昨日いただいたコメントの中で、「一国平和主義は通用しないのでは?」というご意見があったが、私は逆に、「なぜ平和憲法のある日本が、軍事的貢献をしなければならないのか?」と問いたい。
昨日の記事の中でも述べたが、「世界第2位の経済大国としての責任」、「石油などの資源確保のため、必要な安全確保」(古くはシーレーン防衛論)などがあるが、はっきり言って、憲法違反である。
そもそも、現行憲法では、「陸海空の三軍はこれを保有しない」と述べているし、「国際紛争の解決に武力を用いない」とも述べている。
普通に考えれば、どこをどう振っても、自衛隊の存在はもとより、その海外派兵は違憲であるのは明白である。
するとすぐに出てくるのが、今の憲法が時代に合わなくなっているのだから改憲しろ。という意見である。改憲を俎上に乗せて、真っ向から国民に信を問うのは、本来の姿である。しかしそれを行わないで、なし崩し的に解釈改憲を行い、「自衛隊派遣恒久法」をもくろむのは、政治家の姿勢として容認しがたい。
また、本当に「経済大国はアメリカ主導の戦争に派兵しなければならない」というロジックが正しいのかどうか、もう一度考え直すべきであろう。日本はGNPよりも国の力を正確に示すGDPで、すでに15位に転落している。太田経済・金融担当大臣は、「日本経済はもはや一流とは言えない」と述べた。
アメリカ追従の軍事偏重政策ははたして国のためになっているのだろうか?
ここで、先日の読売新聞世論調査の結果を引く。
改憲の是非については、ほぼ拮抗となったが、2002年以降、改憲賛成は減り続け、反対が増え続けている。それはちょうど、アフガニスタン、イラク派兵が始まった時期に重なる。
そして、国民の8割は、現行憲法9条1項(平和主義・不戦主義)を支持し、2項(戦力の不保持)についても過半数が、これを支持している。
では、この1項と2項の支持率の違いは何であろうか?統計データの読み方は慎重でなければならないが、ここは類推でもほぼ間違いないと思う。それは、「自衛のための軍備は認めるべき」という意見が、それなりに存在するからである。
自衛軍の保有。これは、現在の憲法による、自衛隊の違憲性についての解決策であり、また国の交戦権や、海外派兵(国際紛争の解決に武力を用いない)が認められていない以上、自衛軍の保有については、憲法改正論の課題であり、国民的議論に任せられるべきである。
現在、違憲状態ながら、実質世界第6位の軍事費を投入し、おもにその航空自衛隊の戦力では、世界3位とも4位とも言われる自衛隊を保有している日本がこれ以上の戦力を保有する必要があるとは考えにくいが。
さて、この、改憲に対する国民の意識調査を見ても、国民は基本的には、現行の平和主義を尊重している。ただ2割強の人が、自衛軍の保有を求めている。
では、その自衛軍を海外に派遣すると言う任務を恒久化するという、政府与党の法案について、簡単に触れる。
以下は知人が講演会に出席して取ってきたメモの原文である。この案は、俗に石破(現在の防衛相)試案と呼ばれるものである。
(転載)
〜 それは、2006年8月に自民党防衛政策検討小委員会で石破茂委員長のもとで
「国際平和協力法案」という案がまとめられています。それをみればこれから出てくる
目的は、政府の判断で世界中、いつでもどこへでも自衛隊を派兵し、アメリカ軍と
同じような戦闘ができるようにすることを可能にすることです。憲法9条が骨抜きに
されてしまいます。
○ 派兵の要件
・国連総会の決議があるとき
・国連機関の要請があったとき
・わが国が特に必要と認める事態・・・・・・・これがあれば派兵は何でもOK
○ どんな活動をするか?
・停戦監視活動
・人道復興支援活動
・安全確保活動
今までは後方支援のみとしてきたが、イラクのファルージャ攻撃のような戦闘も
可能にする。
・警護活動
今まではなかったが、これからは要員、施設、物資輸送の警護をする。
・船舶検査活動
公海上で相手船舶に停止命令を出し、従わないときは危害射撃(マスト、スクリ
ューへの射撃)、抵抗されたら反撃する。
○ 武器使用基準の緩和
上記のような活動の遂行のために、国際的な基準に従い武器を使用する。
○ 徴兵
自衛隊員が人を殺し、殺される状況が生じる可能性。
自衛隊員の応募者が減ると、徴兵制の可能性。
石破発言 「徴兵制を憲法違反と言ったら、これは正気の沙汰とは思われない」
「外国の方の徴兵制を奴隷的、苦役にあたると言ったら、あまりにも
恥ずかしくて日本人をやめたくなる」
○ 徴用
医師、看護師、建設業者、運送業者などが強制的に戦場へ「徴用」される可能性。
簡単にまとめると上記のようになる。
赤文字のところは、事実上、ほぼ無限定に自衛隊を海外派兵することを可能にし、武器の使用もなし崩し的に認めるということである(国際的な基準に従い武器を使用する。 とは、軍隊である以上、ほぼ無制限な武器使用を認めることになる。)
また、青文字の部分に注目していただきたいが、海外派兵で死傷者など被害が出て、現在、応募制であるが定員を確保できずに悩んでいる自衛隊への志願者がさらに減る場合に備えて、石破試案では、徴兵制も視野に入れているのである。
石破発言の「苦役云々」は、現行憲法18条の「苦役からの解放」という条文が、徴兵制を禁止しているという、憲法学上の通説を指してなされているものであるが、ならばぜひ日本人をやめて、アメリカ国軍にでも自らなり、子供がおられるなら、志願させてもらいたい。
ごちそうを食べるのであっても、嫌いなものを無理やり食べさせられるのは苦役である。ここで18条が禁止しているのは、そのような「本人が望まない行為」に、国権により強制的に従事させられることを禁止しているのである。他国で徴兵制の国はあるが、先進国では徴兵制は減少する傾向にあることも指摘しておこう。また、他国でそうだからと言って日本が徴兵制にする理由にはなるまい。
この件については、また他で述べたいと思うのでここはひとまず置く。
このように、国民に、「丸腰はいやだ」という感覚での「自衛軍の保有」を求める意見が存在するのは事実であるが、その自衛軍を、アメリカ・ブッシュ大統領の「テロとの戦い」(テロからの自衛のためにアフガンやイラクを侵略する)のロジックで「自衛」の名のもとに海外派兵しようというのが、石破試案である。
しかも徴兵制まで視野に入れている。
先に紹介した読売新聞の調査では、「自衛隊派遣恒久法」への賛否が、双方40%台で割れたが、やや賛成が多かった。しかし、この調査では、上記のような石破試案の内容を説明していない。
自民党の改憲草案と合わせてみれば、自衛軍という名の世界有数の軍が、アメリカが行っているのと同じように世界中で戦争ができる(しかも国益では無くアメリカの命令によってだ)国にして。志願者が少なければ徴兵制にしよう、と言っているのである。
ここまで説明して初めて、「恒久法は是か非か」という問いがなされるべきである。読売は恣意的にその調査を怠ったのである。
また、石破試案の内容を知らなかったとはいえ、派遣恒久法に賛成した人々に考えてもらいたいのは、「自衛隊を行かせればよい」という、自分とは無関係な世界について、上から目線で物を言っていないか?実際には自分自身または自分の子弟が徴兵され、海外の戦地に送られることを前提としている石破試案に賛成するのかあらためて問うてみたい。
以上、述べてきたように、石破試案は、現行憲法に完全に違反する。
このような法律を「自衛隊派遣恒久法」として成立をもくろむのは、守屋前防衛省次官の汚職で氷山の一角が明らかになった、「防衛(軍事)利権」の存在、拡大の狙いと、アメリカからの要求を受ける形で、対米追従外交に、国民(自衛隊員を含む)の命でもって応えようという、無茶な議論である。
「自衛隊派遣恒久法」の成立は決して許してはならない。これは単に憲法違反と言うだけでなく、自民党の私益のために国民生活と命を犠牲にしようという暴挙である。
なお、付言すれば、私も限定的自衛軍備の必要性は、それを望む国民が多いのであれば、認めざるを得ないと思う。しかし、過去の別の記事で述べたように、それはまさに専守防衛に特化したものであるべきである。それは現在の自衛隊でも金額的には十二分である。
狭い問題を言えば、それだけの税金を投入しながら、今の自衛隊(特に海上自衛隊)には、国防能力よりもアメリカの空母機動部隊護衛機能の方が優れているという馬鹿げた問題もある。
今までは税金を。今後は国民の生命を自分たちの利権のために犠牲にしようという、自民党のもくろみを許してはならない。




私達は外から命を奪われるのではなく、内から命もお金も生活も健康も売られているという現状を直視するべきではないでしょうか?