2008年05月03日

憲法記念日に寄せて。「攻撃的護憲論」の提唱

 今日は、現行憲法施行から、61年目となる憲法記念日です。
 毎年、護憲派、改憲派の集会が開かれますが、改憲派の集会は、旧態然たる顔ぶれに、動員された横浜の右翼系高校の学生たちが参加しているというもので、市民の力で盛り上がる護憲集会に比べ、その凡庸さは批判されてしかるべきですが、マスコミの扱いは同等です。
 まぁ、そんなことは今はどうでもよいことで。

 コイズミ郵政選挙で、たなぼた式に衆議院で三分の二を取った自民党は、次は参議院で三分の二を取れば改憲が発議できると意気込み、舛添現厚労相が中心になってまとめた、自民党新憲法草案を発表し、参議院選挙では、改憲に妄執を燃やす安倍を選挙の顔として昨年7月の参院選に臨みました。
 安倍自身は改憲も争点と言っていましたが、現実には年金の給付漏れが発覚し、自民党に猛烈な逆風が吹いて、安倍自民党は、結党以来とも言われる大惨敗を喫しました。三分の二どころでは無く、野党に参議院の過半数を取られてしまったのです。
 私は、この結果は、年金問題もさることながら、教育基本法、国民投票法などで、強行採決を繰り返し、国民生活への視点を全く持たなかった安倍内閣への批判票もかなりあったと考えています。つまり、国民は改憲を望んでいないと。

 この選挙の結果、自民党は参議院で過半数を得るだけでも、2010年、2013年の参議院選挙で勝利しなければならず、三分の二など、遠い話です。今すぐの改憲は、遠ざかったとみて良いでしょう。

 先日発表された読売新聞での改憲に関する世論調査では、改憲反対が、わずかながら賛成を上回りました。昨日発表された日経新聞の同様の調査では、5%ほどの差で改憲賛成が上回りました。
 「改憲反対か賛成か」と問われれば、進歩的、リベラル的改憲を望む人も含まれるので、必ずしも自民党が望む改憲派が多数というわけではありません。

 注目すべきは、憲法9条に関する意識調査で、読売では80%を超える人が、9条1項の平和主義を支持していますが、陸海空の三軍の保持を否定し、国の交戦権を否定した9条2項支持は55%になっています。この差は、自衛のための軍備を必要とする人の意識の現れだと思います。

 現在、具体的な改憲の蓋然性は遠ざかったとはいえ、今後、自衛隊派遣恒久法など、本来は違憲の法律が次期国会に上程される見通しです。憲法の外堀を埋めようという動きです。そして、最高裁への人事権を濫用しての、行政(総理大臣)による司法への介入がある以上、最高裁は憲法判断を避け、違憲立法審査権を行使せず、行政府の言いなりに、派遣恒久法のような違憲法規の乱立を容認し、なし崩し的解釈改憲が進むでしょう。それも、「自衛」 の名の下に。

 ここで私が提唱したいのは、自民党の新憲法草案の内容を、国民に広く知らしめ、その欺瞞を的確に指摘し、自民党の国民2極支配(支配者と被支配者)という目的をくじくための批判を広く展開することが得策だと思うのです。

 9条について言えば、自民党の草案では、1項の平和主義は残すものの、前文と2項を改変し、自衛軍の存在と、その海外派兵を可能にしようとしています。それは自衛隊派遣恒久法との合わせ技で、アメリカが自衛のためと称してアフガニスタンに侵攻し、同様にイラクに侵略したのと同じ理屈で、世界中で自分の都合で戦争を始められるようにするもので、本来的意味の「自衛」ではありません。
 また、派遣恒久法では、徴兵制を視野に入れています。これは現行憲法18条の「苦役からの解放」に違反します。つまり自民党の軍事戦略は、言葉を飾っているだけで、結局は、軍を保有し、海外へ侵略的出兵することを可能にするものです。
 その欺瞞を暴かねばなりません。

 さらに、12条、13条への改変で、基本的人権が、今までの公共の福祉による制限ではなく、行政府の都合で制限できるように改変される事実ももっと明らかにして、攻撃すべきです。
 自民党の草案では、そのあとに環境権などの「飴」が列挙されて、一見、人権が拡大したように見せていますが、実際には、12条、13条改変により、それらの人権も、行政府、立法府の一方的都合で、制限されるものとなり、自衛軍が訓練をするから、貴方の家を壊します、補償はしません(「お国のためだぁ」)。っという理屈もなりたつ条文にしています。

 また、現行憲法の立場からも、今のワーキング・プア、ネットカフェ難民、高齢者への負担増などの、コイズミ・カイカクのつけが、人間の生活と尊厳を踏みにじる状況になっています。これは25条の「生存権」の精神が踏みにじられているのです。

 以上のように、自民党の新憲法草案は、良く読むと、反国民的で、為政者の都合で、国民の生命、生活、財産を平気で踏みにじる内容のものだということを、今は改憲が発議できない状況に安心しないで、今のうちに徹底的に攻撃し、たたいておくべきだと考えます。
 これは、護憲団体の内輪の活動だけでなく、弁護士会や、消費者団体など、あらゆる国民の立場に立った組織で幅広く、緻密に行うべきだと考えます。

 私は、明日、明後日に、千葉の幕張メッセで開かれる、「9条世界会議」において、発言の機会があれば、この意見を述べるつもりです。9条護憲を唱えているだけでは、自民党の草案に負ける可能性があること。そして、9条だけでなく、他の自民党の草案をたたくことにより、その薄汚い野望を砕き、結局は9条護憲に結びつける、「包括的護憲運動」を提唱します。

 私自身は、過去にも述べたように、進歩的改憲に賛成で、専守防衛の自衛隊を持つことも、国民が望むのならば容認する意見の持ち主です。しかし、それは自民党の草案とはかけ離れたものです。自民党の、自分たちの利権あさり。反対意見の封殺を目指す、新憲法草案を葬り去るために、今のうちから、攻撃をするのです。
 それがひいては9条護憲につながり、そのあと、私の意見のような、進歩的改憲について議論すべきだと考えます。
posted by 眠り猫 at 05:45| 東京 ?J| Comment(2) | TrackBack(3) | 憲法
この記事へのコメント
この記事のご意見にほぼ伝面的に賛成いたします。
私たちが9条の会を広めようと、あの手この手で人集めをしても、若者は少ない。
若者たちと話すと、ほとんどが憲法を深く考えていなしし、何よりも中身を知らない。
それに、誰かに対して反対意見を唱える姿勢がない。反対意見を言う場合も、キレたように一方的な意見しか述べられない。人の意見を、冷静に聞けないし、発言しようともしない。

「若者に“青春”はもったいない」というパラドックスがある。
今「若者に“未来”なんてもったいない」と思う。
Posted by そりゃないよ獣医さん at 2008年05月04日 10:03
日本国憲法は、成立の過程から、独法流ではなく、英米法流で解釈すべきであります。
日本国憲法の精神を実力で守るのが自衛隊の本来あるべきところです。
軍それ自身が悪なのではなく、軍の実質の統帥者がいかなる思想をもっているのかがポイントです。
私が、ここのブログで気になるところは、管理人さんの言動の中に、立法府の身勝手な都合と言う民主主義の否定を含むような無政府主義者的発言がみられることです。
行政府を掣肘できるのは立法府だけであります。そして、立法府は選挙を経て、選ばれた者たちであって、彼らが決めたことを身勝手ということは、民主主義の否定に繋がるのではないかと思います。民主主義体制下では、議会で決定されたことによって生じた利益も不利益も選挙民は甘んじて受けなければいけません。
私は、正直いうと、反(日本の)リベラル派です。ソ連崩壊後、日本では保守vs社会主義から保守vsリベラルに変化しましたが、(日本の)とつけたのは、欧米のリベラルからすると、日本の多くのリベラルは、マルクス主義的な感覚を未だ引き摺っているように感じるからです。すなわち、自由及び衡平に関する信念が弱いように感じます。
日本国憲法よりも、さらにリベラルなワイマール憲法から、ナチスが出てきたことを教訓とすべきなんですが、日本のリベラルはこれを知りません。
Posted by ぺんぺん at 2008年05月05日 12:36
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