一昨日、北朝鮮が、核計画の内容を記した申告書を提出し、それを受けて、
アメリカブッシュ政権は、1988年(パパ・ブッシュの時)以来続けていた、北朝鮮をテロ支援国家と指定したのを、解除する動きに入った。
日本国内の論調は、ほとんどが、拉致問題を置き去りに、ブッシュ政権が在任期間のうちに少しでも何か功績を残そうという、拙速な動きであり、テロ支援国家解除はするべきではないという意見である。
また、北朝鮮の核計画申告書の提出や、原子炉の冷却水冷却塔の爆破も、「ショーにすぎない」と、批判的な報道が目につく。
はたして本当にそうだろうか?
まず、北朝鮮をめぐる、6カ国協議の目的を確認しておきたい。それは、北朝鮮の核放棄に向けた硬軟両様の手段を用いての交渉である。
拉致問題を主張しているのは、日本だけにすぎない。日本の10倍以上もの拉致被害者がいる
韓国も、日本と歩調をそろえてはいない。
核放棄を議論する場に、拉致問題を持ち込んで、対北朝鮮強硬策を主張しているのは、安倍前首相が官房長官を務めてから顕著になった動きである。
それ以前は、コイズミ電撃訪朝により、一部拉致被害者が帰国し、拉致問題の解決への糸口が開かれたときであった。私は、コイズミという政治家を評価していないし、あの電撃訪朝も、彼特有の
パフォーマンスにすぎないとは思っているが、それでも拉致被害者の一部は帰国を遂げた。
しかし、日本国内にいる、安倍を含めた極右の、北朝鮮敵視策によって、軍拡をもくろむ勢力は、拉致問題を押し立てて、対北朝鮮強硬策を主張するばかりでそれ以外何もしてこなかった。
だが、よく考えてみよう。
6カ国協議とは、北朝鮮の核放棄が目的であり、北朝鮮は、遅滞
工作を行ったり、さまざまな要求を出しながらも、徐々にではあるが、核放棄に向けて、日本を含めた6カ国協議の中で決められた
ステップを踏んできている。
申告書の中身には、現在保有している核兵器が記載されていないのは問題だが、それは今後の協議にまかされるのだ。この時点でアメリカが「テロ支援国家解除」に動いたのが適切か否かは私には判断できないが、もともと指定したのはアメリカの勝手に、大韓航空機墜落事件を理由に始めたものであり、拉致問題とは何の関係もない。北朝鮮の行動に対し、何らかの見返りをするというのは、6カ国協議の進め方の基本である。ここで、拉致問題は置き去りだというのは、おかしいと思う。
そもそも、拉致問題は、国際的犯罪であるのは事実だが、核兵器放棄というイシューから比べれば、国際的には重要度が低い。被害者家族の心情を思えば、それは計り知れないものがあると思うが、それに拘泥して、核放棄への交渉を停滞させることはできないのが他の当事国の本音であろう。
この記事を書くのを1日遅らせたのは、マスコミの発言を見ていたからだが、その中で興味深い発言が2つあった。
1つはまさに国連のパン・ギムン事務総長の発言で、核計画の申告で、北朝鮮の核放棄へのステップが一歩進んだのを歓迎するという談話である。同様のことは静岡県立大学の教授も言っていた。
拉致問題に拘泥せずに見れば、そういうものかと思わせるものであった。
もう1つは、毎日新聞の記者(?)の意見で、ブッシュ政権は、退任前の
ポイント稼ぎではなく、パパ・ブッシュによるテロ支援国家指定や、自分自身の「悪の枢軸」発言が、北朝鮮を追い詰め、核保有に走らせ、北東
アジアに危機を招いたことを修復しようとしている(歴史に汚名を残したくない)というのが今回の行動だと指摘している。
つまり、北朝鮮、アメリカ双方の思惑や、行為の内容のデコボコはあっても、今回の一連の動きは、北朝鮮の核放棄に向けての前進だととらえる考え方があるのである。
当然である。申告書の提出とそれに対する見返りは、日本も参加した6カ国協議で定められた手順に沿ったものであり、日本の拉致問題だけを理由にその
プロセスを停止することはできないのである。
たぶん、アメリカ、
中国、ロシアのマスコミは、拉致問題にほとんど触れていないだろう。日本よりも被害者の多い韓国は日本と同じ気持ちかもしれないが、北朝鮮の核の脅威から逃れるためにはやむを得ないと考えているのではないか?
今後も核放棄に向けて、6カ国協議で粛々と交渉が続けられることを期待したい。
拉致問題については、私は以前から、日本は北朝鮮ときちんと対話の場を設け、アメリカの背後からものを言うのではなく、独自外交で北朝鮮と交渉し、できれば日朝の窓口を開き、日本人が現地入りして拉致問題の調査にあたれるように、国交正常化に向けて交渉すべきと考えている。
ただひたすら制裁だとか、非難を続けていても、何も出てこないのは、これまでの北朝鮮の対応からわかりきっていることだ。また、日本独自の外交を行えないあたり、日本の外交力のなさを如実に示している。
この背景には、北朝鮮を敵視し続けることによって、弾道
ミサイル防衛構想など、軍拡を進める口実にしたい、軍需利権を漁る安倍らの政治業者の思惑が絡んでいるのであろう。旧ソ連時代の北方領土問題と同様、問題の存在を言いたて、相手国に罵声を浴びせるだけで、実際の具体的解決行動を全くとらず、その問題を口実に軍拡を続けてきたのが日本の自民党政府である。
はっきり言えば、拉致被害者の家族の方々は、威勢の良いことを言う与党政治家にだまされているのであって、自民党には、拉致問題解決の意図は無いのである。与党に必要なのは、軍拡の理由として使える仮想敵国にすぎない。
ここにきて、日本の頭越しに、アメリカがテロ支援国家解除に動いたからと言って、どうだというのだ。本来の核放棄に向けたステップを進めているにすぎないのに、それを非難しても、6カ国協議の当事者の1国として無責任のそしりを免れない。協議の場で日本は何をしてきたのだ?
拉致問題は、日朝間の2国間の問題として、別に外交を行うのが筋であると思う。それをしない政府与党には、拉致問題解決の意思がないものと思わざるを得ない。
また、冷却塔の爆破を冷笑する馬鹿が多いが、原子炉に冷却塔は無くてはならない。少なくともそれを再建するまでは、北朝鮮は、原子炉を稼働させることができない。それは衛星などで検証可能であり、冷却塔が古いから意味がないとか何とか言い募っている日本のマスコミは、原子炉の構造を知らない愚かものの発言であろう。
核放棄に関しては、今後も検証可能な形での着実なステップを6カ国協議で進めるべきであろう。
拉致問題については、アメリカの意向もわかったことだし、日本は韓国と共同して、独自外交で北朝鮮と交渉すべきことと考える。それが一番現実的道だと考える。
今回のこの件の報道で、やはり日本のマスコミはマスゴミだと、想いを新たにした。